アナリティクスの進化(Descriptive からPrescriptiveへ)

2016年2月2日

analyticsデータの有効活用で企業価値を向上しようとする取り組み(所謂ビジネスアナリティクス)は、以前からその効用が注目され運用されていましたが、近年のビッグデータやIoTというキーワードの登場と共に、競合他社との差別化や消費者の潜在的購買意欲の探索、そして将来の不確定な市場で生き残るためにも、その必要性は益々高まっています。その高まりと並行するように、企業が行うデータアナリティクスもテクノロジーの発展と共に大きく進化を遂げています。

 Netflix、Amazon、Facebook、そしてGoogleなどの世界を代表するインターネットカンパニーなどではアナリティクスを早くから武器にしており、一歩も二歩も先んじてこれを優位性とし強みにしていますが、現在ではあらゆる業種において、どのようにデータを経営の意思決定や業務効率化に活かしていくかが大きな課題となっています。本稿では、そのアナリティクスに焦点を絞り、現在一般に分類されうるアナリティクスの利用タイプとその進化を全2回に分けて説明します。IBM等主要なIT企業が提唱する最もメジャーな分類である以下3つのアナリティクスタイプを引き合いに出しながらそれぞれの目的や違いについて説明し、その役割を紐解いていこうと思います。

 アナリティクスのタイプは大枠として次の3つに大別されます。Descriptive(記述的)*、Predictive(予測的)、そしてPrescriptive(処方的)です。

(*テクノロジーリサーチ会社のGartnerなどはDescriptiveとPredictiveの間にDiagnostic(診断的)をもう一つのタイプとして括っていますが、本稿ではDescriptiveに包括されているものとして説明します)

 第1回目はDescriptiveとPredictiveについて、そして次回のコラムにてPrescriptiveについて解説したいと思います。

Descriptive Analyticsとは…

 過去に何が起こったかをデータから読み取る分析作業がDescriptive Analyticsの主要目的です。したがって、最もトラディショナルでほとんど全ての企業が行っているタイプのアナリティクスになります。ここで扱われるデータは、比較的小規模で構造化されているものが分析対象となり、過去の出来事を数字から読み解くためのあらゆるレポート(財務、在庫管理、営業、マーケティングレポート)がこの範疇に該当します。例えば、営業現場であれば「何件の訪問で何件の受注成績があったため、結果として受注率は何%で売上達成率は何%であった」という営業成績の分析がこのタイプに当てはまります。

 また、過去に何があったかを数字でまとめるだけでなく、その過去の出来事がなぜ起こったのか(診断=Diagnostic)ということについて、原因と結果の関連性を調べることもここでは重要になります(分析方法としては主成分分析や因子分析といった方法が使われることがあります)。

 今後のあらゆる施策のKPIを定めるためのベースにもなり、次のPredictive AnalyticsやPrescriptive Analyticsにもつながる分析となるため、Descriptive Analyticsは基本的な分析ですが大事なステージとなります。

Predictive Analyticsとは…

 過去のデータを基に将来のある変数を予測するための分析がこのステージとなります。ビッグデータやマシンラーニングが大きく関わってくるのもこの段階となります。ここで扱われるデータは、構造化されたデータよりも非構造化されたデータが多数を占めてきます。したがって、構造化されたデータの処理に適した従来のData Warehouse(DW)やBusiness Intelligence (BI)だけでなく、Hadoopなどの非構造化データを処理するに適したオープンソフトウェアの活用が必要となるステージとなります。

 Predictive Analyticsでは、大容量のデータをあらゆるテクニック(ニューラルネットワークや回帰分析、サポートベクターマシーンといった数多ある分析テクニックがここに含まれる)を用いて機械学習させることで、一見してはわからないデータとデータの関係性(パターン)やある一定の傾向(ルール)を導き出し、そこから得られる洞察(インサイト)を活用して、将来ないしは不確定の目的変数をあるスコアや確率で予測することを指します。なお、Forecastingといわれる時系列分析のテクニックで、時間軸を取り入れた分析によって将来のある時点での変数を予測することや、Text Analyticsのように、SNSなどの膨大なテキスト情報から消費者のある傾向を導き出しマーケティングキャンペーンに活かすといった分析もこの領域に入ると言えます。

 したがって、Descriptive Analyticsとの最大の違いは、前者はあくまで過去の情報をまとめ、その結果を数値で把握すること、そしてその原因を追求するまでであるのに対して、Predictive Analyticsは集めたデータから得られた洞察をもって、いかに不確定な要素(変数)を予測し、次の一手をプロアクティブにサポートするかということにあります。

次回に続く…