イギリスでのドローン問題と対抗策

2016年5月19日

イギリスでのドローン問題と対抗策

 

2013年38096715_sにAmazonがドローンによる配送サービスの構想を発表してから今日に至るまで、ドローンの利活用の検討があらゆる分野で進んでいます。それと同時に、一般人でも簡単に操作可能なドローンが増えることによって引き起こされる数々の問題も露呈しており、ドローンの安全な利用のための規制や取り組みが各国で策定されつつあります。そこで今回はイギリスにおいてドローンがもたらす懸念事項やそのための規制についてお話したいと思います。

 

イギリスでのドローンによる事件

BBCその他主要メディアによりますと、昨今のドローンの普及によって以下のような事件及び近い将来にその可能性があると報じています。

 

  1. テロの危険

現在のところ商業目的でない20kg以下のドローンは誰もが所持し操作してもよいことになっています。そのため市場には多くのドローンが売買されています。ロンドンを拠点にしたシンクタンクRemote Control Projectが2016年1月に発表した報告書によると多くのドローンがテロリストや反体制派等のアクティビストに渡り利用される恐れがあり、テロ組織に指定されているヒズボラ、ハマス、そしてイスラミックステート(IS)では、既に監視や貨物輸送にドローンを利用しているようです。未だ欧米などでドローンによるテロ攻撃の例はありませんが、注意が必要とのことです。

 

  1. 密輸など

メキシコからアメリカへの麻薬密輸にドローンが利用されている事件も報じられていますが、ここイギリスにおいては、ドローンによる刑務所内への物資輸送未遂事件が2015年だけで33件あったと法務省が発表しています。例えばセキュリティが特に強固であると言われているマンチェスターにある刑務所においても、ドラッグと携帯電話、そしてSIMカードをドローンによって所内の敷地に運ぼうとした事件が発生しており、警察はドローンが刑務所のセキュリティに対する新たな脅威であると認識しています。

 

  1. 旅客機との接触懸念

2015年にはドローンと旅客機のニアミスが40件発生しました。そして2016年4月には、ブリティッシュエアウェイズの132名の乗客を乗せたエアバスの操縦士が、ロンドンの空港に近づいた際にドローンとの接触を報告しましたが、その後接触の事実はないと調査当局が発表しています。しかし、今後も接触が起こらないという保証もなく、もし衝突しエンジンにドローンが吸い込まれてしまった時には大惨事になる可能性があり、喫緊の対応が迫られています。

 

 

問題への対処方法

以上のような問題の解決・防止のために、警察ではドローン専門部隊の編成や、また鷲を用いたドローンの捕捉についても検討されています。また、前述のシンクタンクRemote Control Projectの報告書によりますと、多岐にわたるリスクの回避については以下の3つの階層で対抗策を講じることでそれに対処すべきであると言っています。

 

  1. Regulatory Countermeasures(規制対策)

第1の階層は規制となります。イギリスのルールである通称Dronecodeでは、現在のところ「操縦者が常に目視可能」「高度122m以下」「混雑したエリア以外」での飛行が条件で、かつカメラを搭載したドローンは「人々や建物、乗り物から50m以内を飛んではならない」ことになっています。

規制はドローンのサプライチェーンとライフサイクルユース全体に影響を及ぼすため、経済的に運用され続けることが可能で、プライバシーと個人の自由のバランスを損なうことなく、そして商業的利益と安全面を満たすものであることが望まれます。

 

  1. Passive Countermeasures (受動型対抗策)

この階層ではドローンに対して受動的に、つまりドローンの動きに警戒し事前に察知することで脅威を防ぐことができるEarly Warning Systemを導入した対抗策となります。これには例えばCCTVやレーダーといった既存技術のものから、音響発見技術を駆使したリアルタイムアラートのDroneShieldDedroneといった最新のドローン発見サービスなどがあり、これらを運用することで怪しいドローンを特定し、不審なドローンに対しては、その状況に応じてドローンを機能させている無線周波数帯をブロックしたり、最近開発されつつあるドローンマルウェアを送り込むことで、機能停止させるという手段が考案されています。

 

  1. Active Countermeasures (能動的対抗策)

Passive Countermeasuresでは拭えない脅威について有効な階層となります。これは例えば、敵対的ドローンを破壊する方法であるミサイル、ロケット、レーザーディフェンスシステムといった武器の活用となります。

 

以上、現在ドローンを取り巻く情勢(問題と対抗策)について述べましたが、ドローンはもともと軍事用として開発された経緯もあり、かつ、監視、攻撃、輸送等にも優れていることから、悪用される可能性もありますが、今後の商業的発展・公共的利活用といった利点とのバランスの舵取りをいかに進めていくかが、これからの1〜2年で注視されるところです。

 

 

 

 

参考動画リンク:

Amazon Prime Air

ワシを使ったドローン捕捉 (British Police Are Thinking Of Using Eagles As Drone Hunters – Newsy)

UKでの規則 (UK CAA Drone Flying Rules Explained )