パーソナライゼーションとプライバシー

2018年7月4日

小売業界が、消費者のニーズに合わせてカスタマイズされた顧客体験を提供するにあたり、パーソナライゼーションとビッグデータの活用は、必要不可欠になりつつあります。その一方で、消費者はプライバシーに対する懸念も感じているため、企業の視点では、より良い顧客体験の提供による成長と信頼性保持のバランスがあるマーケティングが必要となってきています。さらに、AIや機械学習の出現による次世代型パーソナライゼー  ションの動きも出てきており、企業の顧客保護はさらなる重要性を増しています。

Accentureが、世界33ヶ国の約25,000人の消費者を対象に、2017年6月から7月にかけて行った調査レポートである” Accenture Strategy Global Consumer Pulse Research” によると、アメリカの消費者の約半数は、優良顧客として特別な扱いを受けたいと感じています。また、ブランドが的確にパーソナライズしたショッピング体験を提供できない場合、フラストレーションを感じています。ブランドのパーソナライゼーション欠如の結果、消費者の25パーセントが、そのブランドから購入するのをやめているというデータもでています。グローバルな視点で見ると、ブランドが自分たちのニーズ、好み、過去のトランザクションを深く理解した上で、より良い顧客体験を提供していると認識している世界の消費者は、わずか22 パーセントとなっています。パーソナライゼーションの欠如により、小売業界がこの1年間で失った売上は、アメリカだけで7,560億ドル、世界では2兆5,000億ドルにもなると算出されています。

その一方で、ほぼ全員が、企業が顧客のプライバシーを保護することが重要であると感じるとともに、個人情報保護に対してしっかりと取り組まない企業は信頼できないと感じています。今年5月25 日に施工された欧州連合(EU)の新しいプライバシー規制”General Data Protection Regulation (GDPR)”は、改めて個人情報保護の重要性を世界に発信しました。GDPRはEU の法律ですが、EU居住者のEメールアドレスを収集してEメールを送信する場合は、送信者がどこにいるかに関わらずGDPRに準拠する必要があります。また、GDPRは、データ主体からの同意と個人情報の使用に関する厳しい規制もあることから、世界各国のマーケティング担当者も自分たちのEメールマーケティングをGDPRに準拠させるべく、その対応を行いました。

パーソナライゼーションとプライバシーの話に戻ると、アメリカの消費者に関して次のようなデータがでています。

  • 43パーセントは、ブランドとの信頼関係が損なわれていない限り、常に自分の体験をパーソナライズするブランドと買い物をする傾向がある
  • 31パーセントは、ブランドが、商品・サービスをリコメンドするために、顧客ごとにコンテンツをカスタマイズするサービスに大きな価値を見出している
  • 48パーセントは、Amazon Dash Buttonのような、商品の再注文をインテリジェントセンサーが自動的に行うスマートリオーダーサービスを利用している
  • 36パーセントは、Amazon EchoやGoogle Homeのようなデジタルアシスタントを利用しており、そのうちの89パーセントがその経験に満足しているが、40パーセントは、技術がニーズを正しく解釈、予測することに薄気味悪さを感じているようである
  • 92パーセントは、企業による個人情報のプライバシー保護を非常に重要だと感じている
  • 79パーセントは、それを適切に行えていない企業に対してフラストレーションを感じている
  • 43パーセントは、インテリジェントな新しいサービスが、自分や家族について多くを知ってしまうことを恐れている
  • 66パーセントは、企業が個人情報をどのように利用しているかをよりオープンで透明性あるものにすることにより、高い信頼を得ることを望んでいる

ところで、消費者の期待が高まるにつれて、先進的な企業は次世代型パーソナライゼーションの提供を用意し始めています。Accdentureでは、それを”Hyper-Relevance -超関連性”と呼んでいます。

今日のパーソナライゼーションは、顧客の購買行動、嗜好、住所、電話番号など、比較的固定された属性のみに焦点を当てているため、静的でタイムラグがあります。デジタル社会における顧客との関連性は、はるかにダイナミックで、常に変化し、常に利用可能です。そのため、特定の状況で顧客のニーズを理解し、購入意思決定を促すことに焦点を当て始めています。そこでは、バイオメトリック、地理的位置、ゲノムデータなど新しいカテゴリーの顧客データを収集し、予測分析、人工知能、機械学習などによる新しいレベルでの洞察により、顧客の変化する状況にリアルタイムで対応することが可能になります。

ただし、超関連性によるサービスや顧客体験を提供するために、本質的な個人情報の入手にあたり、企業が顧客からさらなる高い信頼を確保することが前提条件となります。信頼は一連の相互作用の上に構築されますが、一瞬にして失うものでもあり、企業は高い信頼性を維持するために、常に顧客との約束を守り続け、そのリスクに対抗しなければなりません。超関連性により、顧客の懸念は必然的に高まるため、デジタルトラストがますます重要な位置付けになります。企業が個人情報をどのように使用するかについて、顧客がより厳しく管理する必要があり、そのため企業はより透明な組織を求められ、さらに、顧客情報の保護のために適切な保障措置が講じられていることを保証する必要があります。