ロンドンオリンピック: 広がるソーシャルメディアの活用法

2012年9月3日

オリンピックの競技結果集計に初めてコンピュータが使われるようになった1964年の東京オリンピックから48年経った現在。結果速報はもちろん、スコア ボードの表示からチケット販売システムまで、ITなしではオリンピックが成り立たない時代になりました。ロンドンで迎えた第30回夏季オリンピックは「デジタルオリンピック」と呼ばれるほどITの活躍が期待されていましたが、開幕後とくに注目を浴びたのは、ソーシャルメディアを活用したオリンピックの「新しい楽しみ方」が実現したことでした。

ツイート数は北京の125倍以上

ツイッターの集計によると、ロンドンオリンピック期間中のツイート数は世界で1億以上、北京オリンピックの125倍以上を記録しました。ツイート数がピー クを迎えたのはウサイン・ボルト選手が男子200メートル走で優勝した瞬間で、わずか1分の間に80,000ツイートを突破したそうです。

オリンピック期間中のツイッター集計

世界でもっとも名前がツイートされた選手:
ウサイン・ボルト選手: 6万8,000回
マイケル・フェルプス選手:4万5,000回
トム・デイリー選手 :2万8,000回

日本でもっとも名前がツイートされた選手:
吉田沙保里選手 :11万5,000回
澤穂希選手:10万回
入江陵介選手:2万5,000回

世界でもっともツイートされた競技名:
サッカー/Soccer/Football:820万回
水泳/Swimming: 530万回
陸上/Athletics:330万回

アスリートが身近な存在に

ソーシャルメディアの世界的な普及に大きく貢献したのは、芸能人から政治家まで、多くの有名人がツイッターやフェイスブックを利用するようになったこと。 ロンドンオリンピックでは、国際オリンピック協会が選手にソーシャルメディアの活用を推進、選手が発信した情報をまとめる専用サイトThe Olympics Athlete’s Hubを開設しました。

その結果、水泳のマイケル・フェルプス選手や陸上のジェシカ・エニス選手を始めとする多くのアスリートがツイッターやフェイスブック上に写真をアップしたり、ファンに向けたメッセージを書き込みました。

日本人選手も70人以上がツイッターのアカウントをもっていますが、その中でも水泳の北島康介選手はライバルのブレンダン・ハンセン選手とのツーショットや、後輩へのメッセージを公開し注目を浴びました。ロンドンオリンピックはソーシャルメディアの活用により選手と視聴者の距離を縮めたといわれており、”Socialympics”という新たな言葉をも生みました。

ツイッターのコンテンツを分析し人々の感情を可視化

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ツイッターから分析した人々の感情を可視化するロンドン・アイのライトショー。 (画像提供:EDF Energy

ロンドンオリンピックのスポンサーのひとつで、大観覧車ロンドン・アイのスポンサーでもあるEDFエナジー社は、オリンピック・パラリンピック期間中に英国でツイートされたコンテンツを収集し、人々の「感情」を分析、その結果をロンドン・アイのライトショーで表すEnergy Of The Nationプロジェクトを実施しています。同ライトショーはパラリンピック期間中の9月9日まで毎晩9時から行われています。またこれと似たプロジェクトのEmotoは、 オリンピック・パラリンピック期間中の世界中のツイートをリアルタイムで分析することによって人々の感情だけでなく、競技や選手に対する盛り上がりも可視化。Emotoの分析結果はウェブサイトで見られるほか、それをもとに製作されたアート作品がランカシャー州プレストンで行われる WE Play Expo (9月7日-9日)で展示されます。

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Energy of the Nationの分析結果はEDF Energy社のウェブサイトでリアルタイムで公開されている。 (画像提供:EDF Energy

ソーシャルメディアの普及により、人と人、人と組織、あるいは組織と組織の間のコミュニケーションがよりインタラクティブになったことは言うまでもありま せん。ロンドンオリンピックにおけるソーシャルメディアの活用はその代表的な例であるとともに、コミュニケーションのツールとしてだけでなく、人々の感情 や社会の傾向を可視化するのに有効的なメディアであるということを証明しました。ビジネスにおいても、情報を発信するだけでなく、消費者の声や情報を集め るためのメディアとして利用する企業が増えています。