スマートフォンや物理店舗での生体認証テクノロジー利用

2019年12月31日

スマートフォンや物理店舗での生体認証テクノロジー利用 生体認証は政府関連機関にて長い間使用されてきたが、Appleが2013年にiPhone 5Sに指紋リーダーを搭載したことで、生体認証テクノロジーは消費者向けの大衆市場にも持ち込まれ、他のデバイスメーカーもその後このテクノロジーの採用を進めてきた。

少々古いデータで恐縮だが、2018年に世界で出荷されたスマートフォン15億3,000万台のうち、指紋センサーを搭載する割合は全体の60%と推測されており、2014年の19%から大幅な増加となっている。同様に、2020年までには世界で出荷されるスマートフォンの64%が、顔認識テクノロジーを搭載するだろうと予測されている。こちらも、2017年のわずか5%から年々大きく増加している。 12 table スマートフォンのみならず、パーソナルコンピューターなど多くのパーソナルデバイスに生体認証テクノロジーが組み込まれ、より多くの消費者が生体認証を使用し始めているが、テキサス大学が2018年5月に発表したレポートでは、これら生体認証の用途はスマートフォンやデバイスのロック解除が主であった。事実、多くの消費者は、生体認証はパスワードやPINよりも簡単で便利だと考えてはいるが、デジタルのプライバシーや セキュリティへの懸念はますます増加しており、ロック解除のように個人情報が極力利用されない使用のみにとどまっていた傾向はあったと思う。ただ最近は、Apple Payな どのウォレット機能や、金融機関のアプリのログインなど、さまざまなアプリやサービスへのアクセスで生体認証の利用は増加していると思う。

一方、生体認証テクノロジーの利用は物理店舗へと広がってもいる。店舗のセキュリティ向上のために、今では多くの店舗内で防犯カメラが設置されている。スタッフの行動把握や万引き犯を捕まえたりする目的で天井や壁などに設置されたカメラは、ソフトウェアをアップグレードすることにより生体認証カメラへと変わることができる。顔認識ソフトウェア会社のFaceFirstは、1秒間に2,500万人の顔とデータベースを一致させ ることができ、スーパー、デパート、食料品店、薬局などに加え、フォーチュン 500などの顧客もいる。ここでもプライバシーへの影響が懸念されるが、多くの小売業 者は消費者の行動追跡、顔認識、音声認識など、広告やプロモーションのターゲティングのために生体認証テクノロジーを検討しているのも事実である。たとえば、ある高級デパートでは、顔認識テクノロジーを使用してVIPの識別を行ったりしているようである。Home Depotでも、マーケティングスタッフがセキュリティ映像を使用して買い物 客を追跡し、閲覧した商品を観察できるようにしている。セキュリティとマーケティングの融合が着実に進んできているように感じる。