アナリティクスの進化(Descriptive からPrescriptiveへ)2

2016年3月1日

前回に述べた2つの分析タイプは、今までその分類を理解していなくとも、皆様の中には意識せずに職場で多かれ少なかれ実行し日常業務に活かされているものと推察いたします。しかし、今回解説するPrescriptive Analyticsは一部の大企業や先進的なIT企業以外ではまだまだ活用が十分でないと言われています。

(以下のグラフが示すように、Google TrendsでPrescriptive Analyticsをキーワードに検索してみますと、2013年以降にやっとこの用語が認知され始めたことがわかります)

 

032016_graphSource: https://www.google.com/trends/explore#q=prescriptive%20analytics&cmpt=q&tz=Etc%2FGMT
 

Prescriptive Analyticsとは

 Prescriptive Analyticsという分類が最初に定義されたのは、おそらく2010年、IBMの研究者が発表した記事“The Analytics Journey”内においてです。その内容を引用して日本語意訳しますと、Prescriptive Analyticsとは”与えられた一連の目的とその必要条件、そしてある制約の下において、(蓄積されたデータを利用し)その経営課題解決のパフォーマンス向上に最も寄与すると期待されるアクション/決定を機械的に算出するためのあらゆる数学テクニック”となります。

 そのテクニックはOptimization(最適化計算)とMachine Learning(機械学習)の組み合わせとなります。Optimizationは読んで字のごとく、与えられた条件下において求めたい値の最適値を導くための方法であり、Machine Learningは前回のコラムにも記載した通り、ビッグデータをシミュレーション分析する上で欠かすことのできないツールです。ここではそれぞれのテクニックの詳細は割愛しますが、これら2つのテクニックを併用しなければPrescriptive Analyticsは成功しません。したがってPrescriptive Analyticsとは、「ビッグデータから導き出した予測結果(Machine Learning)を活かして、掲げられたビジネス課題の達成のために起こすべき次の意思決定のための最適解/選択肢(Optimization)を導く分析」と要約することができます。

analytics02 Prescriptive Analyticsとは決して単体で機能するものではなく、前回に説明した2つの分析タイプの延長上にあるものであり、それら分析を理解せずしてPrescriptive Analyticsの利活用をすることはできないということです。実はこの分析のコンセプト自体は特に新しいものではなく、皆さんがご存知のAmazonやNetflixでは、以前からこの分析タイプを活用して顧客獲得拡大に成功しています。例えば、Amazonでチェックもしくは購入した本の履歴結果を基に、あなたが気に入るであろうと推奨され表示される本の数々、またはNetflixで観た動画からあなたが次に観たくなるであろうと推奨してくる動画タイトルの数々を思い出してください。これらは膨大な顧客の商品閲覧・購買データからあなたと同じものを閲覧・購入したユーザーが次に何を買ったかを分析し(Descriptive)、それに応じてあなたが興味を示すであろうものを予測します(Predictive)。そして、それを最適化して提示するというリコメンド機能は、Prescriptive Analyticsの範疇に入るサービスの一形態となります。

 現在ではIoTの普及によって、リアルタイムに広範なあらゆるデータ収集が可能になってきたことや、ビッグデータの分析手法の著しい発展(最近話題のDeep Learningなど)も相まって、その終着点となるPrescriptive Analyticsも相乗的な効果をもたらしています。特にPrescriptive Analyticsで威力を発揮する人間の意思決定を介さない”意思決定の自動化”による商品開発は、Google Self-Driving Carを筆頭としてあらゆる機械製品の頭脳として応用されてきています。

 以上、前回と今回のコラムを通じて3分類された分析タイプをご紹介しましたが、皆様の会社におけるデータ活用の次のステップをご検討いただくのに役立てばと存じます。