ビジュアル検索とそのSEO対策

2019年9月30日

人間の視覚的識別は、画像を見て13ミリ秒以下で見ているものを正確に把握することができるという。テクノロジーの世界で人間と同じくらい迅速かつ効果的に画像を理解するには、画像内の特定のオブジェクトを識別し、すばやく処理できる機械学習ツールが必要なことから、今までビジュアル検索は困難であった。しかし、この数年非常にゆっくりとした進歩ながらも、GoogleやEコマースでビジュアル検索が現実化してきている。

検索で単語を入力し、検索エンジンが関連する画像を提示する画像検索と異なり、テキストの代わりに画像をクエリーとして使用するビジュアル検索では、画像内のオブジェクトを識別し、それらのオブジェクトに関連する画像を提示する。ここでは、機械学習テクノロジーを用いた視覚処理エンジンのニューラルネットワークの活性化による画像処理が行われている。

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スマートフォンでのビジュアル検索エンジンアプリとして2017年に発表されたGoogle Lensは、現在Googleアプリに組み込まれ、その一機能となっている。アプリを使って撮影した写真を分析し、アプリ内のニューラルネットワークに組み込まれているGoogleの膨大なデータやアルゴリズムやナレッジグラフに基づき、その画像に関する情報やEコマースでの購入へのリンクを表示する。さらに、ビジュアル検索では、ニューラルネットワークの理解以上の認知心理学に基づく複雑な検索エンジンプログラムも必要とされ、Googleが2014年に買収した人工知能研究の第一人者のDeepMindのテクノロジーも生かされている。

(イメージは、Google Lensによる検索結果のスクリーンショット)

Pinterestは独自のビジュアル検索により、2017年3月からアプリを介して人物、商品、食事などの写真を撮影し、その写真を分析して洋服や家庭用品やレシピの表示をし、Eコマースとの連携もはかっている。多方面にわたる分野で活動するGoogleとは異なり、Pinterestはビジュアル検 索エンジンの開発のみに集中できることから、ビジュアル検索技術の有力企業になる可能性が非常に高い。

さらにEコマースとの連携も他ソーシャル系アプリより抜きん出ている。実際、Pinterestでは、毎月6億件以上のビジャル検索が行われているという。さらに、写真検索に加えて、テキストも追加できる機能も提供されており、特定のアイテムを探している場合に、より絞り込まれた、より求めている結果に近づくことができる (例: コーヒーテーブルに合った新しいソファを探している場合、コーヒーテーブルの写真にソファというテキストを入力)

Pinterestはツールを日々改善し、常により多くのオブジェクトを認識し、より正確にすることを目指しており、Pinterestは非常に強力なビジュアル検索ツールとなっている。

 

同様に、イギリスのファッション小売業のASOSも、2017年8月にビジュアル検索ツールをリリースしている。ユーザーはASOSアプリにて写真を撮ったり、あるいは撮影した写真、スクリーンショット、雑誌などからの画像をアップロードし、その画像内の商品、もしくは類似した商品をASOSサイトで検索できる。当初はイギリスに限定されたサービスで あったが、今では他の国でも利用可能となっている。

(イメージは、筆者撮影とASOSアプリによる検索結果のスクリーンショット)

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ビジュアル検索が可能になってきたことにより、検索手段は、テキスト、音声、イメージと豊富になる。ビジュアル検索や音声検索の普及に伴い、テキストベースの検索が完全になくなる可能性は低いが、ビジュアル検索と音声検索のシェアは間違いなく大きくなる。このため、マーケティング担当者もこれらの検索に向けて、対策の必要性がでてくると思われる。Gartnerの予測によると、ビジュアル検索と音声検索をサポートするために、ウェブサイトの再設計を行うブランドは、コンバージョン率向上、新規顧客獲得、顧客満足度向上等により、デジタルコマースの収益を2021年までに30パーセント増加することができるだろうと予測している。

イメージをクエリーとするビジュアル検索にとって、そのSEO対策も重要となる。高品質で関連性の高いイメージを作成し、最適化すれば、多くの成果を上げることができ、今のところ画像メタ検索が引き続き機能すると考えられる。画像メタ検索は、テキストベースのクエリーを使用して画像、アニメーションなどの視覚コンテンツを検索し、関連性によってソートされた検索結果として一連のイメージサムネイルを返す。データベース内でインデックス付けされた画像メタデータは、ファイル名、altタグ、画像に関連付けられた説明などを含む。検索エンジンに画像のコンテンツに関する可能な限り全ての情報を提供することで、ビジュアル検索のSEO 対策ともなる。ところで、Googleは昨年、画像検索に関する最新のアルゴリズムの変更を行ない、画像とコンテンツの両方に基づき結果をランク付けするようになっている。