Eメールのアクセシビリティ向上

2019年10月31日

Eメールは世界で最も広く使用されているコミュニケーションチャネルの1つであり続けており、技術系市場調査会社のThe Radicati Group発行のレポートによると、Eメールユーザーは2019年末までに全世界で30億人近くになると予測されている。またEメール関連ソリューションを提供するLitmusのレポートによると、ニュースレター購読者が、1件のEメールに費やす平均時間は、2017年の11.1秒から2019 年は13.4秒へ、Eメールの平均投資利益率は、2018年の38ドルから2019年の42ドルへと、それぞれ増加している。

ところで、Eメールに関して今まであまり議論されてこなかった点の一つとして、アクセシビリティがある。Eメールにおけるアクセシビリティとは、Eメールのコンテンツが誰にでも利用可能、かつその機能を操作可能であること、とLitmusは定義している。 世界では、次のように恒久的、もしくは一時的な様々な障害により、Eメールの使用や企業とのやり取りが困難な方々がいる。

• 世界保健機関(WHO)は、約13億人の視覚障害者がいると推定しており、そのうち3,600万人が盲目とみなされている。
• 色覚異常は、男性は12人に1人、女性は200人に1人の割合で発症。
• 推定15パーセントの人々が失読症である。

また、骨折や作業中など腕の不自由な際はEメールの利用が困難な時もある。さらに、2030年には高齢者数が14億人に達すると予測されているように、世界の人口が高齢化していることもEメールの利用に影響を及ぼしてくる可能性もある。人体の能力だけではなく、世界にはデータ接続や最新のデバイスが制限されることにより、満足なユーザー経験が得にくいという新たな課題も生じている。

アクセシビリティは、これらすべての課題を解決することが望まれる。 1990年に制定されたThe Americans with Disabilities Act of 1990 (ADA)は、公共施設や、民間施設へのアクセスを行い易くする環境の設立を支援している。テクノロジーが世界中で普及している現在、ウェブ上でのアクセシビリティを確実に実行することが必要だが、そのためには、Section 508やWeb Content Accessibility Guidelines (WCAG)のようなガイドラインが採用されている。医療、高等教育、政府、金融など多くの業界にとって、これらの法律やガイドラインに従うことは非常に重要である。

Eメールにアクセシビリティを組み込むことは、今までEメールコンテンツへのアクセスが難しかった購読者にも、キャンペーンを届けることができる。アクセシビリティの高いEメールの作成は、企業にとってもビジネスの成功を促進するのに役立つ。事実、ROD グループによると、世界の障害者人口は年間1兆2,000億ドルの可処分所得を持っていると推定されている。 Eメールのアクセシビリティに関して、大多数のブランドがその重要性を理解し、77パーセントがアクセシビリティを優先事項としている。が、その一方で、アクセシビリティのベストプラクティスを実行することに苦労しているブランドが多く、すべての キャンペーンでEメールのアクセシビリティに関するベストプラクティスに従っているのはわずか8パーセントにすぎず、29パーセントがアクセシビリティのためにEメールの最適化をしていないと回答している。(Litmusの調査データより)

アクセシビリティ最適化のオンライン支援技術にはいくつかの種類があるが、最も一般的なのはスクリーンリーダーである。 スクリーンリーダーソフトウェアにより、画面に表示されるインターフェイスとコンテンツが音声に変換され、弱視や盲目の購読者にとってEメールコンテンツの読解が可能となる。現在は、ほとんどのオペレーティングシステムにスクリーンリーダーソフトウェアが組み込まれており、またJAWS やNVDAのようなツールも提供されている。 スクリーンリーダーは非常に有用な支援技術であり、Eメール開発者にとってこの技術を理解することはますます重要になっている。また、盲目ではないが弱視のユーザにとっては、画面上のテキストやその他の視覚要素のサイズを大きくするズーム機能、コンテンツのコントラストと明瞭さを向上させるためのコントラストモードも有用である。Amazon Alexa、Apple Siri、Google Assistantなどの音声アシスタントソフトウェアも、Eメールのチェックや返信を可能にし、Eメールアクセシビリティ向上に貢献している。