資金調達の可能性を広げるクラウドファンディング

2020年5月11日

スタートアップ企業にとっての資金調達は、金融機関からの融資、エンジェルやベンチャー キャピタルからの資金調達などが考えられるが、いずれもそのプロセスは容易ではない。
特に、ある程度の規模の調達を必要とする場合は、世界を変えるほどのテクノロジーと明確なビジョンを持っていない限り調達は厳しいと、シリコンバレーで活躍しているベンチャーキャピタリストから聞いたこともある。
プロダクトやソリューションなどがまだ構想段階の状態では、ほぼ不可能と言っていいだろう。このような環境において、数年前から注目されているのがクラウドファンディングである。

クラウドファンディングは、プロジェクト遂行やプロダクト開発などのために、グループや一般人からオンラインで広く資金を調達する方法で、次のように主として報酬型、債務型、エクイティ型という3種類のタイプがある。

<報酬型クラウドファンディング>

出資額に応じてギフトやプロダクトサンプルを出資者に提供する前提で資金調達を行う。
クラウドファンディングのプラットフォームを提供するKickstarterやIndiegogoが、このタイプで有名である。
Kickstarterは、ベンチャーキャピタルから大型資金を調達する前のテクノロジー企業やクリエイティブなスタートアップが、まずプロジェクトを実現するために必要な資金の調達支援で知られており、目標額に達成したときのみ資金調達を受けることができるオール・オア・ナッシングのプラットフォームである。
2009年の設立以来、15万5千を超えるプロジェクトで40億ドル以上の資金調達を実現している。目標額と期間の設定、報酬の設定を行うだけで容易に開始できるが、キャンペーンを開始するにあたりKickstarterから承認を受ける必要がある。
一方のIndiegogoは、オール・オア・ナッシングの固定資金獲得に加えて、目標達成とは関係なく柔軟に資金調達が可能なオプションも提供しており、技術的なイノベーション、創造作品、コミュニティプロジェクトのキャンペーンなどでよく利用されている。

<債務型クラウドファンディング>

資金を借り入れるタイプだが、金融機関からの借入と異なり、プロセスと調達時期にスピード性がある。このタイプで有名なところとしてLending Clubがある。Lending Clubはビジネスローンとして、1~5年の期間で最大3万ドルまで融資するが、実は個人でも最大4万ドルまで利用できる。会社設立から1年以上、年間5万ドルの売上などの条件があるが、通常の金融機関からの融資よりもプロセスが容易で、資金提供のスピードも早い。

<エクイティ型クラウドファンディング>

出資者にエクイティを提供する前提で資金を調達するタイプで、有名なところではCircleUpがある。CircleUpは、主に触ったり、味わったり、使ったり、訪れたりできる具体的なプロダクトやサービスを提供するテクノロジー、フィットネス、食品・飲料分野の消費者向けスタートアップと、少なくとも100万ドル以上の純資産と20万ドル以上の年収を持つ認定投資家を結ぶプラットフォームとなっている。
CircleUpが提供する独自の機械学習テクノロジーエンジン”Helio”は、何十億もの個別データポイントに基づき130万社以上の企業を評価し、その中から最も有望なスタートアップをピックアップする。また、投資家は各企業のプロファイル確認やプロダクトサンプルのリクエスト等が可能である。投資を受ける企業は最低100万ドルの収益が必要だが、今まで200近くのスタートアップに2億6,000万ドルの資金提供の実績がある。

また、上記3タイプとは異なるクラウドファンディングとしてはGoFundMeが有名である。GoFundMeは、特定の目的、緊急支援、慈善活動等のために利用されているクラウドファン ディングで、企業も個人も利用できる。オール・オア・ナッシングの資金調達ではないため、調達した額はすべて獲得できる。今まで、1,000万ドル以上の資金調達を含む数多くのキャンペーンを成功させてきているが、登録の容易性からキャンペーンの数が膨大にあり、実際に目標額を達成できるのは10%ほどである。