米国でのWork from Home事情

2020年6月11日

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、IT企業の一大拠点であるシリコンバレーを擁するカリフォルニア州では、3月19日に州知事から不要不急以外の外出を禁じる”Shelter in Place”が宣言され、ライフライン上必要不可欠な業務を除いて事実上の”Work from Home -WFH”、日本でいう在宅勤務が始まった。

シリコンバレーやサンフランシスコ市を含む一帯の郡は、早くから感染者がでていたことから、カリフォルニア州全域よりも2日早い3月17日未明からWFHが実施されていたが、AppleやFacebookなど一部の企業は2月後半から3月初めにかけて、すでにWFHを社令として出している。特にソフトウェアやクラウド企業は他の企業に比べて業務場所が柔軟なことから、WHFを行いやすいのは事実である。

業務上の外部との接触に関して少し遡ると、対応の早い企業は1月下旬から中国への出張禁止、その他アジア諸国へは原則的に禁止、どうしても出張せざるを得ない場合は、アメリカに帰国後、上司から出社の承認を得るまでWFHを社員に要請していた企業もある。2月中旬に入ると、基本的に外部への訪問を禁止する企業が出始め、外部とのミーティングはウェブ方式に置き換わっている。

このように、WFHの実施には、インターネットの普及、ネットワークの高速化、ウェブ会議のソリューション、セキュリティの強化等、整備されたICTインフラストラクチャーが大きく貢献している。

また、アメリカでは元来成果主義が尊重されてきていることから、場所や時間を選ばず業務を行っている人が多く、WFHに切り替えやすい面もある。

その一方、対面サービスを主とする企業や製造、加工業など、WFHを行うことが基本的に不可能な業態もあり、その結果一次的に休業もしくは解雇対応をせざるを得ず、失業率が大幅に増加したのも事実である。

ウェブ会議のソリューションといえば、ビデオシステムインフラストラクチャーを持たない場所でのビデオ会議を可能とするソフトウェアプラットフォームの影響が大きく、古くから有名なCiscoのWebExやLogMeInのGoToMeetingに加えて、昨年株式公開したZoomが一躍注目されている。Zoomの他にもMicrosoft TeamsやGoogle Meetなどの利用も多く、複数拠点からの同時参加が可能で、かつ会話を字幕で表示したり背景を変えたりできるような豊富な機能を備えながら、安価で利用できるプラットフォームの出現は、利便性と効率性を求めるビジネスのみならず、教育の場などでも広く利用されている。

余談ではあるが、B2Bマーケティング担当者は、今までイベントやセミナーなどで行っていた集客型コアマーケティングを、Webinarで開催することにより、顧客や見込客との接点の敷居を低くすることも可能となった。

WFHをサポートするネットワークインフラストラクチャー企業もある。筆者がインターネット接続で利用しているXfinityは、通常1ヶ月間のデータ利用量の上限が1TBとなっており、それを超えた場合は超過料金が発生するが、新型コロナウイルスによるWFHやオンライン学習によるデータ利用量の増大を考慮し、3月中旬から一時的にこの上限を撤廃している。当初は4月末までの措置であったが、現在は6月末まで延長されている。

WFHでは、学校もオンライン教育に変わったことから終日家にいる子供の面倒を見ることができる、車での移動が大幅に減少したことから空気が澄んでいる、といったような別の側面でも効果がある。

新型コロナウィルスの感染も徐々におさまり、段階的な経済再開が進んでいるが、WFHが直ちに解除されるわけではない。業務のあり方が見直され、一部の企業はWFHを年内いっぱい継続することを発表している。Twitterに至っては”永久的”なWFHも発表しており、Facebook もTwitterに次いで同様の発表をしている。