顧客データプラットフォーム

2020年10月25日

マーケティング担当者の顧客データ管理の支援に特化した、ベンダー中立組織であるCDP Instituteによると、顧客データプラットフォーム (Customer Data Platform -CDP)とは、他のシステムからアクセス可能な永続的で統一された顧客データベースを作成するパッケージソフトウェアと定義されている。

CRMやDMP (Data Management Platform)と混同されやすいが、CRMは既知の顧客または潜在的な顧客について主に販売パイプラインと予測の分析のために、DMPは短時間のデータをもとに主に広告をより的確にターゲティングしオーディエンスにリーチするために利用されるのに対し、CDPはCRM、DMP、トランザクションシステム、ウェブサイト、ウェブフォーム、Eメール、ソーシャルメディア、Eコマースなどのオンラインチャネルに加え、オフラインチャネルからも収集したデータを使用し、生涯にわたる顧客の行動と顧客ジャーニーを分析、統合された顧客プロファイルを自律的に構築することを目的とする。

また、CDPの主な利点として、データサイロ (1つの部門で利用可能であるが、組織の他の部門からは分離されているデータ)を回避し、すべてのチームとツールにわたり一貫した顧客データの収集、活用を可能にする主要なインフラストラクチャーとなっている点がある。
CDPで収集するデータやカテゴリーは企業により異なるが、HubspotによるとCDPが収集、整理する顧客データには主に次の4種類がある。

1. IDデータ: CDPの各顧客プロファイルの基盤を構築する。IDデータにより、企業は各顧客を一意に識別し、コストのかかる複製を防ぐことができる。
– 姓名などの名前情報
– 年齢や性別などの人口統計情報
– 住所、都市、郵便番号などの位置情報
– 電話番号やEメールアドレスなどの連絡先情報
– TwitterハンドルやLinkedInアドレスなどのソーシャル情報
– 会社や役職などの専門情報
– 会社固有のユーザーIDやアカウント番号などのアカウント情報

2. 説明データ: IDデータを拡張し、顧客の全体像を提供する。
– 以前の雇用主、業界、収入、職位などのキャリア情報
– 家のタイプ、乗物、ペットなどのライフスタイル情報
– 子供の数や婚姻状況などの家族情報
– 雑誌の購読やジムのメンバーシップなどの趣味情報

3. 定量データ (行動データ): 顧客の特定の行動、反応、トランザクションを通じて、各顧客がどのように企業と関わってきたかを理解できる。
– 購入または返品したプロダクトの種類や数量、放棄されたショッピングカートの数、注文日などのトランザクション情報、購入頻度、購入金額
– Eメールの開封、クリックスルー、日付などのEメール通信情報
– ウェブサイトへのアクセス、プロダクトビュー、ソーシャルメディアエンゲージメントなどのオンライン活動情報
– カスタマーサポートとの通信日、内容、詳細などの顧客サービス情報

4. 定性データ: 顧客プロファイルのコンテキストを提供。企業に関係があるかどうかにかかわらず、顧客が表明した動機、意見、態度などを収集する。
– 企業やプロダクトを認知するに至った経緯、プロダクトの選択/購入理由
– プロダクトへの評価、カスタマーサービスへの評価
– 好みの色、動物、テキスタイル、食べ物などの情報

CDPのプロバイダーは多々あるが、テクノロジー企業のリサーチのためのマーケットプレイスを提供するG2によると、リーダー的存在として、Segment*などが位置付けられている。中でも、Segmentはウェブサイト、アプリ、決済、ヘルプデスクなどあらゆるチャネルにわたり、顧客のプライバシーを尊重しながら、顧客データの統一されたビューを提供し、リアルタイムの意思決定、成長の加速化、魅力的な顧客エクスペリエンスの提供を支援し、70ヶ国以上にわたる20,000社を超える企業で利用されているCDPの第一人者となっている。
最近、クラウドコミュニケーションプラットフォームを提供するTwilioに買収されることが発表された。
*本コラムは米国での事例を基にしています。