サービスとしてのディザスターリカバリー

2021年2月25日

ビジネス継続性の観点から、事業継続計画(BCP -Business Continuity Planning)におけるシステムのバックアップおよびディザスターリカバリー対策は重要な一面を成す。
Ponemon Institute による”データセンター停止のコスト”調査では、計画外のダウンタイムによる企業の平均コストは1分あたり8,850ドルになると報告されている。また、アメリカ連邦緊急事態管理庁(FEMA: Federal Emergency Management Agency) は、自然災害の影響を受けた企業の43%が再開することはなく、影響を受けた企業の29%は発生から2年以内に閉鎖したとも報告している。
災害時における短時間でのデータ復元およびオペレーションの再稼働は企業の生命線とも言える。

SaaSのようにサービスとしてのバックアップ(BaaS -Backup as a Service)に加え、サービスとしてのディザスターリカバリーソリューション”DRaaS -Disaster Recovery as a Service”を提供する企業の存在は、これからの事業継続を考える上での1つの参考になると言える。
DRaaSは、人為的災害や自然災害が発生した場合に自動的にフェイルオーバーを提供するサービスで、ITの弾力性をコスト効率良く改善し、コンプライアンスまたは規制の要件を満たし、リソースの不足に対処できる優れたオプションとして注目を集めている。
また効果的なディザスターリカバリプラン(DRP)のプロビジョニング(設備やサービスの需要に応じた資源の割り当てや設定などを行い、運用可能な状態にすること)、構成、テスト等を行うための必要な専門知識を自社で保有する必要がなく、利用価値が高いと言える。
本来のDRaaSはオンデマンドのIaaS、本番サーバーとバックアップサーバーの同期、フェイルオーバー、RPO(Recovery Point Objective *1 )、RTO(Recovery Time Objective *2)に基づくサービスレベルなどDR運用に必要な全ての要素を包括しているが、それらの一部をコンポーネントとして提供するベンダーもDRaaSとして扱われることも多く、企業にとってはベンダーがどのようなソリューションを提供するのかよく調査する必要がある。

ほとんどの場合においてDRaaSは主要な収益を生み出すサービスではないが、事業継続計画(BCP)の視点から企業にとっては必要不可欠なソリューションの一つであることは間違いない。リカバリーのための第二のデータセンターや経験豊富なサポートスタッフが不足しがちな中小企業にとって特に魅力的であるばかりではなく、DRaaSが成熟するにつれ日常の運用タスクの管理からリソースを解放し、より付加価値の高い活動と見なすものに集中したい大規模企業にとっても魅力的なオプションとなり、より複雑で大規模な実装が実現している。BCPの観点から、災害時に備えたディザスターリカバリー対策において、DRaaSの検討も一考の価値があると言える。

*1: RPO(目標復旧地点)はデータ復旧の「復旧目標に関わる指標」の1つ。何らかの理由によりデータが損壊または紛失した際に決められた時間内(RTO:目標復旧時間)で、どの時点(古さ、世代)のデータを復旧するかを示す指標。
*2:RTO(目標復旧時間)は事業が中断した際に、「いつまでに事業を復旧するか」という目標時間を表す指標。復旧目標は事業の性質、契約条件、取引先関係により異なる。