ERPの昨今

2022年10月12日

ERP (エンタープライズ リソース プランニング) は、ビジネスアプリケーションの統合スイートを提供する機能として定義されている。共通のプロセスとデータモデルを共有し、財務、会計、人事、製造、流通、サプライチェーンなどエンドツーエンドプロセスをカバーするモジュールで形成され、基幹業務、顧客対応、企業の管理および資産管理の側面を含む複数の業界にわたるさまざまな管理および運用ビジネスプロセスを自動化し、サポートする。ERPの導入は、ビジネスイノベーションの推進、ビジネスプロセスの標準化と効率化、ITコスト削減などでビジネス上のメリットが得られることから、欧米を中心にオンプレミスにて広く展開されてきた。

しかし、クラウドコンピューティングの普及に伴い、ERPをクラウドへ移行、もしくはオンプレミスとクラウドのハイブリッド型で使用したいという企業が増え、いざシステム移行を行おうとすると、緊密に各モジュールが連携されているという特徴の為、アプリケーションの切り離しに苦労することが多い。

例えば、製造業で今までサプライチェーンと財務、会計をオンプレミスのERPで運用、管理してきたが、財務、会計管理だけ切り離してクラウドで運用したいと考えた場合、共通のプロセスとデータモデルを共有してきていることから、モジュール間を分け、オンプレミスとクラウド別々のシステムで運用することはかなりの困難が生じる。もしくは、財務、会計管理だけ別のシステムで運用したいと思った場合、そもそも統合スイートというERPの概念からずれてしまうこともある。

そのような中、近年注目されているのが、コンポーザブルERPである。調査会社のガートナーは、構成及び再構成可能なコンポーザブルERPを、企業がビジネス環境の変化により迅速に対応できるようにする管理および運用機能の基盤を構築するための適応型テクノロジーと定義している。アプリケーションプラットフォームを土台として、各アプリケーションをそのプラット フォームにコード記述の必要なくして、あるいは少しだけの記述でプラグインし、アプリケーションの統合とメタデータへのアクセスを容易にすることから、より高い柔軟性とスケーラビリティなどの利点も提供する。

ガートナーのレポートによると、2023年までにERPにコンポーザブルなアプローチを採用した企業は、新機能の実装速度で競合他社を80%上回ると言い、コンポーザブルERP戦略はクラウド化を進めるビジネスに多大な利点をもたらす。さらに、企業は最新のERPソリューションをAI、機械学習、ビッグデータ分析などのテクノロジーと統合しており、SaaSベースのERPソリューションを使用して、コンポーザブルERPがよりアクセスしやすくなる。