クラウドへの移行とツール

2022年12月23日

総務省の調査によると、2021年のクラウドサービスの利用率は、一部の部門でも利用している割合を含めると70%に達し、クラウドコンピューティングの普及は広く一般的になったと言える。その用途は、ファイル共有からERPなどの基幹業務システム(ミッションクリティカルシステム)まで様々である。
企業が新規のアプリケーションをクラウド上で構築し、今まで利用していたデータを全く利用しないという稀な場合を除けば、通常は今まで利用していたオンプレミス環境からクラウド環境へ、オンプレミス環境とクラウド環境の併用、もしくは複数のクラウド環境の利用など、データ、アプリケーション、ワークロードなどを効果的に移行する必要がある。環境が異なることによる動作保証など、複雑なプロセスとなる移行にあたって注意しなければならない点が多々ある。このようなことから、この複雑なプロセスを合理化するクラウド環境への移行ツールに対する需要が高まっている。

クラウド移行ツールは次のような主要な機能を有し、企業は自社の移行計画に沿ったパートナーの選定が可能である。

  • エンドツーエンドの移行支援:
    コンサルティングサービスからアプリケーションの準備、クラウド統合から稼働時間の最大化まで、さまざまな段階での支援を実行。クラウド環境では、既存システムと同じKPIやプロセスフローなどを適用できないため、この機能は非常に重要となる。
  • クラウド移行先との互換性:
    Microsoft Azure 、AWS、Google Cloud、など、特定のクラウド環境を宛先とし、その互換性を提供する。
  • 移行前の評価:
    クラウド環境への移行にあたっては、移行後の費用予測は重要である。場合によっては、既存システムの中からどの部分を移行すべきかなどの推奨も重要となってくる。
  • アプリケーションまたはデータ移行の有効化:
    最小限の手動作業でアプリケーションまたは データをクラウドに移動する。クラウド移行ツールのコア機能とも言える。移行プロセスを綿密に監視し、互換性のエラー、ユーザーの使用感、またはその他の問題を見つけ、移行後のパフォーマンスに影響を与える前に修正する。
  • パフォーマンス最適化の洞察:
    リアルタイムのパフォーマンスの表示、レポート生成など、クラウド環境上でのビジネスプロセスをサポートするダッシュボードが提供されている。

クラウド移行ツールは、オンプレミス環境からの移行に加えて、クラウド環境間でのアプリケーションやデータ移動のサポートをするツールも多い。Microsoft 、AWS、Googleなど大手のクラウド事業者は、自社環境へのマイグレーションツールを提供しているが、 AppDynamicsなど、上記の主要機能を提供するクラウドマイグレーションツールベンダーも多い。また、Microsoft 365やGoogle Workspaceなどへの移行ツールを提供しているところもある。
このように、クラウドサービスへの移行には考慮すべき点が多く、信頼のおけるITパートナーと最適な移行計画を立てて実行していくことが、クラウドサービス移行プロジェクトを成功に導くには必要不可欠である。