デジタルトランスフォーメーションとは

2023年1月16日

経済産業省による2019年7月に取りまとめられた”DX推進指標とそのガイダンス”によると、デジタルトランスフォーメーション (DX)の定義として、”企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化や風土を変革し、競争上の優位性を確立する”、となっている。
社内システムをレガシーシステムなどからクラウド化するシステムの変更、もしくはアナログからデジタルへの転換を図るだけではなく、企業がどのようにして競争上の優位性を確立するかがポイントであり、そのためには、常に変化する顧客や社会の課題をとらえ、素早く変革し続ける能力を身に付けることが重要である。
つまり、DXとは、老朽化、複雑化、ブラックボックス化してしまった既存システムの変更といったIT視点での変革に加えて、企業自体が従来から続くレガシーな企業文化から脱却する必要がある。
そして、このような変革は誰かに任せて達成できるものではなく、経営層自らが経営視点での変革を主導することが必要となる。

2020年に始まった新型コロナウィルスによるパンデミックでは、リモートワークへの急激な変更に対応する必要から、ウェブミーティング、ウェブコラボレーション、業務におけるモバイルの活用など、その面ではシステム変更で十分に対応できた企業は多いと思う。しかし、これはまだDXのスタートラインに立ったにすぎない。ここから、競争の優位性の獲得という戦略的ゴールを見据え、変革のアプローチを継続していくことが企業に求められる真のDXなのである。

DXを成し遂げるには、各企業においてそれぞれ異なるアプローチがあるはずだが、マイクロソフト社は、DXへのロードマップとして次の4つの分野に注力する必要があると言う。

  • 顧客を惹きつける: 顧客に気に入ってもらえる新しい体験を提供し、進化する顧客の期待に応える。
  • 従業員に力を与える: DXを含む組織の変革を成功させるには、従業員のモチベーションとスキルが不可欠であり、生産性を改革し、データ主導の文化を実現する。
  • 運用の最適化: ITインフラストラクチャーの近代化による、組織の有効性と効率を変革する。
  • 製品の変換: イノベーションは、組織が市場での地位を向上させ、より多くの収益を獲得し、関連性を維持するのに役立つ、現代の成功を促進するための最良の方法の1つであり、製品とビジネスモデルを革新する。

海外におけるDXの成功例は数多く存在する。例えばDVDレンタルサービスとして設立されたNetflixは、現在は世界で最も人気のあるストリーミングプラットフォームとなっている。同様に、オンライン書籍販売からスタートしたAmazonや、検索エンジンからスタートしたGoogleなども、DXを成し遂げた企業と言える。

ところで、日本における企業のDX化は、どのくらい進んでいるのだろうか。独立行政法人情報処理推進機構によると、日本でDXに取り組んでいる企業の割合は2021年度調査(対象534社)では55.8%であったが、2022年度調査(対象543社)では69.3%に増加している。1000人を超える規模の企業でDXに取組んでいる割合は94.8%と高いが、100人以下では39.6%(米国57.4%)、101人~300人では61%(米国89.4%)となっており、中小企業におけるDX推進が必要な状況となっている。