Walmartにおけるデジタルトランスフォーメーション

2023年3月20日

デジタルトランスフォーメーションにより企業の変遷を遂げた成功例として真っ先に頭に浮かぶのがWalmartである。ご存じのとおり、Walmartは長年にわたりアメリカにおける最大の小売業として君臨してきたが、1995年に電子書籍のEコマースを開始したAmazonにより、その方向性が大きく変わったと言える。Amazonが電子書籍から多種多様の商品を扱う小売業として成長していく中、実店舗を中心としたWalmartにとってデジタルトランスフォーメーションは必須の課題であったと思われる。

私見であるが、Walmartの変遷の大きな役割を果たした組織としてWalmartLabsの存在があると言える。 @WalmartLabsとして発足し、現在はWalmart内のテクノロジー及びビジネスサービス組織であるWalmart Global Techの一部となったWalmartLabsは、Eコマースに加え、モバイルアプリ、次世代検索エンジン、ソーシャルアプリ、音声テクノロジー、ブロックチェーン、および膨大なる顧客データの分析等々、さまざまなデジタルイノベーションへの挑戦を行い、その結果、現在の新しいWalmarrtが確立され、EコマースでもAmazonの領域を脅かすまでに成長している。

Walmartでは、ビジネスの中核となる分野に技術を集中させているが、やはりその中心となるのは”顧客”である。急速に進化する顧客のニーズを大規模に満たす独自のテクノロジーとサービスを開発した世界クラスの組織を構築してきたことにより、顧客により良いサービスを提供し、差別化されたユーザーエクスペリエンスを創造し、デジタルショッピングが増加し続ける中でビジネスを成長させることができた。パーソナライズされたマーケティング、さまざまな顧客に対応するチェックアウト方法など、ユーザーエクスペリエンス向上を実現させるために、自社開発に加え、他社のテクノロジーも利用したエコシステムの構築を行ってきている。さらに、例えばクラウドベースの集荷、配送、フルフィルメントサービスを他の小売業者も提供できるようにするなど、自社で構築したプラットフォームを他社にも展開することにより、他社のデジタルトランスフォーメーションも加速させ、誰もが最終的に利益を得ることができるような貢献も行っている。

また、顧客へのサービス向上に加えて従業員の効率を高めることも実現している。社内で構築したMe@Walmartというアプリは、機械学習、人工知能、拡張現実、カメラビジョンを利用し、Walmart従業員の個人的なニーズと仕事上のニーズをひとつのアプリにまとめたもので、勤務スケジュールの管理、休暇の申請、シフトの入れ替え、 COVID-19の健康評価の実施などの機能を有し、従業員へのサービス向上も進めている。

(Me@Walmartのスクリーンイメージ、Apple App Storeページより抜粋)