生成AIツールの活用

2023年5月16日

生成AI (ジェネレーティブAI)は、企業が顧客とつながる方法のあらゆる側面に影響を与える革新的な技術であり、企業が顧客体験を提供する方法を再定義することができる。そのようなことから、Open AIによるChatGPTのような生成AIツールは、各業界でその活用が進んでおり、今回はその一部をご紹介したいと思う。

Adobeは今年3月に開催したAdobe Summitにて、Adobeの統合オンラインマーケティングおよびウェブ分析等のアプリケーションを包括したAdobe Experience Cloud全体にわたる生成AIイノベーションを発表。その製品の一つとして、マーケティング担当者がEメール、モバイルメッセージング、およびその他の顧客とのタッチポイント用としてテキストベースのメッセージのバリエーションを作成するのに役立つ”Sensei GenAI”が発表されている。
Sensei GenAIは、 Adobe Experience Cloudのアプリケーションに統合され、計画や資産作成からパーソナライゼーションや顧客ジャーニー管理までのユースケースをサポートする。その主な機能として、Eメールやモバイルメッセージなどのマーケティングコピーの生成、数百万の顧客に提供されるパーソナライゼーションキャンペーンに驚異的な精度で豊富なオーディエンスセグメントの自動作成などがある。

次に、Eメールに関して見ると、ポーランドに拠点を置くEメールプラットフォーム会社の GetResponseは、ChatGPTテクノロジーを採用した”AI Mail Generator”を発表。ユーザーはキーワードを入力し、業界、トーン、デザイン、ターゲットユーザーなどの方向性を入力、選択するだけで、AI Mail GeneratorがEメールの文章、件名、デザイン、写真などEメールのすべてのコンテンツを作成する。これにより、マーケティング担当者はEメールを作成し、より関連性の高いコンテンツをニュースレター購読者に配信するのにかかる時間を従来より85%短縮できるとGetResponseでは説明している。また、AIによる件名の作成機能では、AIで最適化された件名により、購読者のインボックスで目立ち、より高い開封率の獲得が可能となる。

ところで、生成AIツールは決して良い使われ方のみされているわけではない。FBIによると、ビジネスEメール侵害 (Business Email Compromise: BEC)、およびEメールアカウント詐欺 (EAC)による損失は全世界で430億ドル超となっているが、現在流行のChatGPTのような生成AIツールにより、ハッカーはコードを変更し、会話をシミュレートし、カスタマイズされたマルウェアとBEC攻撃でユーザーを迅速に標的にし、企業にとって深刻なセキュリティ上の影響を与えることができる。さらにその機会は無限に存在しているという。
このような脅威に対応するため、AIを利用してBEC攻撃等から企業を防御するための新しいソリューションも利用可能になっている。このようなソリューションは、現在のゼロアワーの脅威 (*)と膨大な数の将来の脅威を特定することで、企業が高度なマルチチャネルメッセージング攻撃を阻止するのに役立つ。添付ファイルの検査、コンテキスト分析、送信者偽装分析などの機能が含まれており、自然言語処理、コンピュータービジョン、機械学習、関係グラフと組み合わせ、クラウドEメール、モバイル、ウェブメッセージングアプリでのメッセージを保護し、BEC、スミッシング(***)、資格情報の盗難、ランサムウェアの悪用などマルチチャネルでのメッセージング攻撃を阻止するソリューションとなっている。

(*) ゼロアワー脅威: これまでに確認されておらず、既知のマルウェアシグネチャ (**)と一致しない脅威。これにより、従来のシグネチャマッチングソリューションでは検出できなくなっている。ゼロデイ脅威とも呼ばれる。

(**) マルウェアシグネチャ: マルウェアの帰属を特定、判別するために用いられるデータ。

(***) スミッシング: SMS(ショートメッセージサービス)を利用したフィッシング詐欺がスミッシングと呼ばれる。