生成AIにより作成されたコンテンツの識別

2023年6月20日

生成AIにより作成された画像、ビデオ、その他のコンテンツの急増、および生成AIが生成した画像を本物と区別することはますます困難になると予測されており、知的財産と著作権の保護は、企業にとって最大の課題となる可能性がある。
アメリカ合衆国著作権局 (United States Copyright Office)による著作権登録ガイダンスによると、著作権は人間の創造性の産物である素材のみを保護できると確立されている。さらに著作者という用語には人間以外の者は含まれていないことから、AIが単にデータを処理しただけで新たな表現や創造性を持たない場合、そのコンテンツは著作権の対象とはならない可能性がある。しかしながら、AIによる生成素材を含む作品では、その作品への作成者自身の貢献に対して著作権保護を主張できるようで、例えばAIが生成したテキストがより大きなテキスト作品に組み込まれた作品に関しては、作品内で人間が作成したコンテンツ部分とAIにより生成されたコンテンツ部分を識別することにより、著作権の出願者は人間が作成した部分を主張する必要がある。

また、AIが既存の著作物を参考にして作成された場合、著作権法の「著作権の侵害」や「公正利用」の考え方が関係することが推察される。AIが他の著作物からの要素を組み合わせたり、模倣したりする場合、元の著作物の著作権を侵害する可能性があるが、公正利用の要件を満たす場合は、著作権法によって許容される場合もあり、AIが作成したコンテンツの著作権については、具体的な事例や法的な解釈に依存することになるが、著作権法は常に進化しており、AI技術の急速な進歩という現況を鑑みると、専門家の法的助言を求めることが重要である。

生成AIと著作権に関してはこのような背景があるが、Microsoft社は自社の製品やサービス全体に AI機能を導入した複数のプロダクトの発表を行ってきている。例えば、ユーザーがいくつかのテキストプロンプトだけでアートを作成できるように設計されたツールの”Bing Image Creator”を3月に発表している。これは、より優れた検索、完全な回答、新しいチャットエクスペリエンス、およびコンテンツ作成機能をユーザーに提供することで、新しいBingおよびEdgeのプレビューエクスペリエンスを強化するために設けられている。 OpenAIのDALL·Eモデルを利用したBing Image Creatorを使用すると、右イメージのようにユーザーは自分の言葉を使用して画像を作成できるようになる。

(イメージは、Microsoftのウェブページより抜粋)

4月には、今年1月初めにプレビュー版として出荷された、ソーシャルメディアの投稿、グリーティングカード、ブランディング、アラート、プロモーションなどのオンラインコンテンツを生成するために使用できる、AIを備えたソーシャルメディアコンテンツプラットフォームの”Microsoft Designer”の完全パブリックプレビューを開始した。これによりテキストプロンプトとそのAIモデルを使ってブログ投稿やウェブサイトなどのプロジェクトを作成できるようになった。
しかし、Bing Image Creatorを使用して生成された画像は、ユーザーが画像を作成し、出所を明示せずに他の場所で使用することが非常に簡単である。また、ますます多くのディープフェイク画像や動画が作成される中、本物のコンテンツと生成AIで生成されたコンテンツの違いを確実に見分けられるようにするために、Microsoft社は自社プログラムのAIアートを確実に識別できるよう積極的な姿勢をとっている。5月に行われた開発者カンファレンスにて、Bing Image CreatorとMicrosoft Designerのアート作品やビデオクリップがAIによって作成されたかどうかを誰でも確認できる機能を間もなく追加すると発表した。

Microsoft社は、「コンテンツの出所と信頼性のための連合」 (C2PA -Coalition for Content Provenance and Authenticity)という標準化団体を共同設立し、出所を認証する方法の研究開発のリーダーでもある。Microsoftのメディア出所は、C2PAにより設定されたガイドラインに従って生成コンテンツに署名、検証し、アプリに組み込まれた新しいメディア出所機能により、画像またはビデオが生成AIにより生成されたかどうかを確認できるようになる。前述のイメージでは、赤で囲ったように、Image Creatorにより生成されたことがすでに明示されている。
同様に、Google社も生成AIにより生成されたコンテンツの識別を支援する措置を講じており、人間が作成したコンテンツおよび生成AIが作成したコンテンツを識別できる方向へと進んでいると言える。