気候変動とデータセンター

2023年9月28日

クラウドコンピューティングへの移行に伴い、クラウドプロバイダーは世界中のデータセンターでサービスを展開している。データセンターサービスに対する需要は世界的に増加し続けているが、データセンターでは、電力を大量に消費するサーバー等のハードウェアとそれらの冷却に必要な大規模空冷装置、およびそれらの電力を供給するための大量のエネルギーとリソースが必要となる。昨今、気候変動および環境問題が大きく注目されている中、データセンターがリ ソースをどのように使用し、それが環境にどのような影響を与えているかは重要な要素となる。

エネルギー使用量

データセンターは、膨大な数のサーバー、ストレージ、ネットワーク機器、機器を格納するラック、およびこれらの機器を支えるインフラストラクチャーに至るまで、あらゆるものに電力を供給するために膨大なエネルギーと電力を消費することから、データセンターが機能するには大量のエネルギーが必要である。アメリカエネルギー省によると、データセンターは最もエネルギーを消費する施設の1つであり、一般的な商業オフィスビルの床面積あたり最大50倍のエネルギーを消費し、アメリカの総電力使用量の約2%を占めるという。

また、国際エネルギー機関によれば、 データセンターとデータ伝送ネットワークは、エネルギー関連の温室効果ガス排出量の1%近くを占めているということで、地球の気温上昇と気候変動に少なからず影響しており、2050年までに実質ゼロ排出シナリオを軌道に乗せるためには、2030年までに排出量を半分に削減する必要があるとのことである。

水の使用量

サーバー等の過熱を防ぐために、またデータセンター内の温度調整のために冷却システムが必要となる。また、データセンターでは湿度も重要なファクターであることから、適切な湿度レベルを維持することも必要となる。Googleによると、2021年、平均的なGoogleデータセン  ターは1日あたり約450,000ガロンの水を消費したという。これは、17エーカー(約68,800平方メートル)の芝生に1回灌漑するのに使用される水の量、または160本のジーンズ用の綿花を栽培して製造するのに使用される水の量とほぼ同じであるという。
また、2021年に極度の乾燥地域であるアリゾナ州に建設することが承認されたあるIT企業のデータセンターでは、内部のサーバーの過熱を防ぐために毎日最大125万ガロンの水が必要になるという。ちなみに、アリゾナ州の住民は一人当たり1日に約146ガロンを使用する。
(1,703,435ℓ:オリンピックサイズのプール〔長さ50m、幅25m、深さ2m〕の貯水量の約68%)
※1,703,435ℓ ÷(50mx25mx2mx1,000)ℓ = 68.14% (約68%)

データセンターがこの大量の水をどこから調達しているかについても、熟考する必要がある。たとえば、Googleのデータセンターキャンパスでは、わずか25%が非飲料水の使用ということで、あとの75%は飲料水源からの利用となっている。

電子廃棄物および有毒廃棄物

誤って廃棄された電気電子機器は電子廃棄物として知られ、国連によると、2019年に世界中で5,360万トンの電子廃棄物が発生し、わずか5年間で21%増加している。これらの電子廃棄物 は、適切な電子廃棄物管理インフラが整備されていない限り、温室効果ガス排出や有毒物質の放出などにより、地球温暖化の一因となり環境へ及ぼす影響は大きい。

以上のように、これらの課題に対処したデータセンターの構築、運営が必須となる。アメリカエネルギー省では、エネルギー効率の高いデータセンター設計のためのベストプラクティスガイドも発行している。今後のエネルギー需要と排出量の増加を抑制し、環境問題に対処するには、エネルギー効率、再生可能エネルギーの調達、業界の強力な取り組みが不可欠であり、次回はある企業のデータセンターについてご紹介する予定でいる。