オラクルデータセンターにおける環境対応

2023年10月15日

前回のコラムでは、クラウドコンピューティングへの移行に伴い、世界的に需要が増加し続けているデータセンターとそのリソースに関して、気候変動および環境問題の観点と絡めてご紹介したが、今回はそのような背景においてオラクルのデータセンターの改革に関してご紹介したいと思う。

クラウドデータセンターでは、機器を最高のパフォーマンスで稼働し続けるために大量の水と電力が必要で、歴史的にこの電力の多くは化石燃料から来ていたが、オラクルでは、2025年までにクラウドインフラストラクチャー(Oracle Cloud Integration(OCI))を100パーセント再生可能エネルギーで駆動することを目標にかかげ、クリーンなクラウドの提供に全力で取り組むことにより、顧客がOCIを使用すると、クラウドのパフォーマンス、拡張性、セキュリティ、経済的メリットを享受しながらも、二酸化炭素排出量を削減できるような仕組みを提供している。

具体的に見ると、オラクルは効率的な冷却プロセスを実装するデータセンタープロバイダーと提携することで、環境への影響を軽減しようとしている。データセンターに設置された機器は熱を発生するため、施設内の温度と湿度を注意深く監視し、維持する必要があり、従来型のデータセンターでは、冷却水を熱伝達機構として使用して施設内の温度を下げるため、大量の水が必要であった。オラクルでは、機械、電気、配管設計で革新的なアプローチを採用し、従来のデータセンターが採用していた標準的な空調アプローチに依存することなく、熱除去を最適化している。このウォーターレスの冷却テクノロジーにより、OCIのサーバーのパフォーマンスと信頼性を維持しながら、従来の冷却システムに替わる持続可能で低電力の使用効率を実現している。また、オラクルには、IT機器が安全に再利用またはリサイクルされることを保証するプログラムを通じて循環経済*に取り組んできた歴史があり、オラクルのリバースサプライチェーンは、一貫して99.5%以上の再利用またはリサイクルを達成している。
他にも、自然光の状態をシミュレートするためのモーション起動LED照明、リサイクル可能な吸音天井タイルやカーペット、輻射熱を反射する白い屋根、食器洗い機のタブレットから手洗いまで環境に優しい廃棄物ゼロの製品の利用など、データセンターで利用するIT機器に加え、データセンター建物の建設資材までデータセンター全体での追求により、徹底したサステナビリティの実現に努めている。

*循環経済(サーキュラーエコノミー)とは、従来の3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指すものです。

個々のデータセンターを見ると、2000年代中頃に開設したテキサス州オースティンのデータセンターでは、その拡張時にサーバーラックの上部から排熱を天井の密閉部分に排出し、コンピュータルームエアコンユニットに直接戻す封じ込めシステムを開発。空気の送出と戻りのシステムを分離して、空気流の速度の調整に取り組み、システムの冷却に必要な電力を削減できるようにした。空気を封じ込めることにより、コンピュータルームのエアコンユニットからの空気流量を低く抑えることが可能となり、消費電力の削減で年間120万ドル相当のエネルギー節約に成功した。さらに、可変速ファンを使用して空気の流れの速度を調整し、システムの冷却に必要な電力の削減に成功している。

さらに、2010年代前半に段階的に開設したユタ州サウスジョーダンのデータセンターでは、サステナビリティ、コスト、運用効率のバランスを取るために、テクノロジーとベストプラクティスを活用しデータセンター設計の継続的な改良によりエネルギー効率の改善を行った。2011年の第一フェーズでは、ユタ州は湿度が低いため、温度約までは新鮮な空気でも動作できると信じ、サーバーの冷却に冷水の代わりに新鮮な空気を使用する直接蒸発冷却への移行を試みた。この新しい冷却システムは確かに効率的で、電力使用効率をオースティンの1.46から1.3に削減できた。しかし、この新方式は直接蒸発装置の制御が難しいということで、2013年の第二フェーズでは、間接蒸発冷却システムへの移行を実施。直接冷却ほど効率的ではなかったが、微調整が少なくて済むシンプルな制御システムや外気の悪影響を心配する必要がなくなるなど他の利点も得られ、サステナビリティの重要な優先事項である水の使用量も削減することができた。その他にもUPS(無停電電源装置)システムの見直しなどにより、最終的に電力使用効率を 1.18まで低減させることができたと言う。


(上記イメージは、サウスジョーダンのデータセンター、データセンターフロンティアのサイトより抜粋)

オラクルではこれらの結果に満足しており、変化するデータセンター環境における将来の設計改良に役立つと信じている。10年後のデータセンターは私たちが想像もできないほど変わっている可能性があるかもしれない。