フィジタルとサービスの多様化 

2024年8月14日

皆さん、フィジタルという言葉を聞かれたことありますか。「フィジタル(Phygital)」は、Physical+ Digitalの造語で、その名のとおり、「仮想環境 -デジタル」を「実際の人間の生活 -物理的」に緊密に統合することを意味する。FacebookがMetaと社名を変更した際、メタバースという言葉を聞かれたことがあると思うが、フィジタルとメタバースの主な違いは、フィジタルは物理世界でテクノロジーがどのように使用されるかを表す用語であるのに対し、メタバースは物理世界と融合する仮想領域であるというところにある。

フィジタルにより、私たちの生活、仕事、コミュニケーション、旅行、勉強、娯楽など物理的な世界が、AR、VRなどで開発されたデジタルの世界と融合し、一方ソーシャルメディアやEコマースといったオンライン環境も物理オブジェクトと融合し、劇的な変化がまさに始まろうとしている。これは、今日のデジタル企業にとってオフライン経済への入り口として機能する。

フィジタルを支えるテクノロジーとして、AR、VR、IoTの他にも、機械学習、ウェアラブル、5Gなどさまざまある。レガシーセクターやシステムに対するデジタル化の影響と同様に、フィジタルはすべての主要な経済セクターにわたり、効率と生産性の向上に貢献することが見込まれている。フィジタルの本質は複数のテクノロジーの組み合わせであることを考えると、デジタル化による効果と比較して、そのアップサイドはかなり大きいと推定される。例えば、Appleや Metaが提供している大衆向け専用ARヘッドセットが広く普及した後、ARが具体的に、そしてフィジタル全体がどれほど巨大になるかを、今日では予測することはほとんど不可能である。

世界的に規模も大きくよく知られている企業でもすでにフィジタルの導入が始まっている。シンプルなところでは、映画からインスピレーションを得たゲームや玩具もその一つである。玩具メーカーとして有名なハスブロは、映画の「美女と野獣」の主人公ベルの人形が、子供たちのコーディングに合わせていろいろなダンスができるよう、プログラム化されたコードアイコンとともに販売した。これにより、子供たちは新しい形でのインタラクティブなコーディング学習体験ができる。同様に玩具メーカーのマテルは、音声認識と人工知能を備えたバービーホログラムを公開している。デジタルでデータ処理されたインタラクティブなバービーのホログラムがプラスチックの容器の中にあり、音声で作動し、子供たちはバービーに服の色など外見を変えるように頼んだり、天候を聞いたり、ダンスをさせたりすることができる。
フィジタルの身近な例として、他にも次のようなものがある。

  • モバイルアプリ:
    スターバックスでは、アプリを通じて、季節、場所、顧客のデータと好みに基づき、パーソナライズされたおすすめ情報の提供と簡易注文を可能にしている。
  • モバイルデバイスとQRコード:
    レストランで、 テーブル上のQRコードをモバイルデバイスでスキャンすると、物理的な印刷されたメニューに触れることなく、タップするとフードやドリンクのメニューが表示される。この種のテクノロジーは新型コロナウィルスによるパンデミックで急速に普及し、その利便性と安全性から、パンデミック後も定着している。また、メニュー改訂時など随時印刷や作成する必要がなく、環境面での貢献にもつながる。
  • ウェブサイトとカスタマーポータル:
    医療業界では、医療提供者が患者に最善のサービスを提供する方法の一つとして、ビデオを利用した遠隔医療が普及してきており、そのコンポーネントを備えたウェブサイトポータルが不可欠となる。直接診察を受ける必要のない患者にとって、ウェブサイトポータルは、医師と会話するための物理的な方法を得ると同時 に、テクノロジーを活用して自分のライフスタイルにさらに適合させることができる。
  • 音声認識:
    AmazonのAlexaやAppleのSiriなどクラウドベースの音声サービスの利用者は大きく増加している。これらのエクスペリエンスには、物理的な要素と組み合わされたデジタル要素が含まれるのが一般的である。たとえば、ウェアラブルデバイスが毎日報告するヘルスデータを追跡するようにAlexaに依頼すると、何か問題が判明した場合、医師との遠隔医療の予約を入れ、そのデータを全体的な健康状態の改善にどのように使用できるかについて話し合うことができる。

このように、フィジタルを支えるテクノロジーの急速な進歩により、ユーザーとの接点を有する企業の業容は大きく変わりつつあり、顧客満足度の向上に加え、サービスの多様化や環境保護への貢献まで望める。