DeepSeekとNvidia株価

2025年1月31日

127日の株式市場で、Nvidiaの株価が約17も暴落した。日本でも大きなニュースとして取り上げられたので、すでにご存知の方も多いと思う。Nvidiaは、時価総額が3.5兆ドルから2.9兆ドルへと約6,000億ドルも下落し、これは、1日での時価総額下落としては過去最大のことであることから、いかにインパクトの大きなものであったかよくわかる。 

以前、”AIサーバーとデータセンター”のコラムにて、AI対応アプリケーションを処理するAIサーバーは、非常に高い発熱と高密度化により、電力と冷却の面での対応が必要となることをご紹介したが、AIに学習させるためには高度な処理能力を有するプロセッサーも必要とされる。 NvidiaのGPUを搭載するサーバーは、高度なグラフィックや大量の計算能力を必要とするゲームやその他のアプリケーションを実行できる高性能コンピューティングシステムとして有名で、最近は同様に高度な処理能力を有するAIコンピューティングにおいて、欠かせないGPUのプロバイダーとして、株価もこの5年間で24倍にもなった。ちなみに、このNvidiaとの優先的なパートナーシップにより、同じく急成長した企業としてSupermicro Computerがある。 SupermicroはNvidiaのGPUの入ったサーバーを、独自開発の水冷テクノロジーと組み合わせ、AIサーバーを必要とするデータセンターでの需要増大により、こちらも株価が約4年間で40倍という脅威の成長を遂げた。その後、会計問題で株価は大暴落してしまったが、それでも5年前の株価に比べて約12倍の株価を維持している。 

筆者はNvidiaの株価は当面は右上がりの状態が継続するものと思っていたが、2023年にスタートアップしたDeepSeekという中国の企業が、OpenAIのChatGPTと同等の大規模言語モデルを、高性能なGPUサーバーを必要とせずに低コストでを開発したことにより、冒頭のNvidiaの株価暴落が起こってしまったのは最近ニュースになっているので、読者の皆さんもご存じと思います。 

DeepSeekも開発においてNvidiaを利用しているが、その技術に費やした金額はわずか560万ドルであると述べており、ChatGPTなどに比べて桁違いの低コストで開発されている。しかも、GPT-4などと同等の性能があり、さらに開発期間もわずか2ヶ月ほどであったと言う。色々な意味で今後の動きが注視されるところです。先週、アメリカでのAI開発にOpenAI、オラクル、ソフトバンクの3社が合同で5,000億ドルを投資し共同事業を立ち上げると発表したばかりだが、DeepSeekのように低コストでAIを開発できるようになれば、そこまでの巨大投資は必要なくなるかも知れない。また、日本にとってもDeepSeekのようなモデルを低コストで短期間で開発できる可能性もあるわけで、今後必須となるAIビジネスにおいて大きなチャンスとなる可能性もある。