自動運転車による乗車サービス
2025年3月15日
自動車およびモビリティ分野の変化を推進する4つの主要な技術トレンドを表す言葉として、”ACES” (日本では”CASE”とも言われている)がある。これは、自動運転のAutonomous、リモートでソフトウェアの問題を修正したり機能を追加したりするConnected、電気によるモーター駆動のElectrification、そしてライドシェアサービスなどのShared mobilityから成り立つ。
- Autonomous(自動運転): 自動運転技術を指し、車両が人間の介入なしに自律走行すること。
- Connected(コネクテッド): 車両がインターネットや他の車両と接続され、リアルタイムで情報を交換する技術を指す。
- Electrification(電動化): 電気自動車(EV)やハイブリッド車など、電力を動力源とする車両技術を指す。
- Shared(シェアリング): 車両の共有やライドシェアリングサービスを指し、複数の人々が車両を共有して利用すること。
Shared mobilityが定着した最近は、それに変わって自動車と歩行者を保護するSafetyが使われることもある。
IT関連技術の集積地でもあるシリコンバレー発の、スタートアップとしては、自動運転による乗車サービスを実現したWaymoや、ロボット工学と人工知能を活用した地域貨物輸送用の自動運転車のNuroなどが有名である。中でも、Googleの親会社Alphabetが所有するWaymoは、初めて無人での自律走行による乗車サービスを開始したことで有名である。Waymoの歴史は2009年のGoogle自動運転車プロジェクト開始に遡り、2015年にテキサス州オースティンで、公道での初の完全自律運転走行を実現し、2018年にアリゾナ州フェニックスで世界初の商用自律運転配車サービスを開始した。その後、Waymoドライバー (人ではなく、いわゆるWaymoの完全自律走行技術を指す)向けに設計され、統合された量産プラットフォームによる、完全自律走行による乗客専用サービスである”Waymo One”サービスを同じくフェニックスで実現している。サンフランシスコでも2022年から乗客限定のサービスを一般向けに開始し、現在はロサンゼルス、サンマテオなどにも展開している。このWaymo Oneサービスは、Waymo Oneアプリから24時間利用可能となっている。
Waymoの自律走行車には、あらゆる方向に何百万ものレーザーパルスを送信し、物体に反射するまでの時間を測定するLiDAR、Waymoドライバーに車両の周囲の360°同時ビューを提供するカメラ (29台のカメラが搭載されており、日中と低照度の両方の条件で見ることができるなど、より複雑な環境にも対応している)、ミリ波周波数を使用して、雨、霧、雪の中でも有効に作動し、物体の距離や速度など重要な詳細をWaymoドライバーに提供するレーダー、最新のサーバーグレードのCPUとGPUを搭載したWaymoドライバーの”頭脳”となるオンボードコンピューターなどのテクノロジーが搭載されている。
Waymoドライバーが新しいエリアで運行を開始する前に、車線マーカーから一時停止標識、縁石、横断歩道など、そのエリアの地図を非常に詳細に作成し、シグナル強度が失われる可能性のあるGPSなど外部データのみに頼るのではなく、リアルタイムセンサーデータとAIを組み合わせた非常に詳細なカスタムマップを使用し、常に道路上の正確な位置を特定している。また、Waymoドライバーの認識システムは、高度な車載センサーから収集した複雑なデータを活用し、AIを使用して、歩行者から自転車、車両から建設現場まで、周囲の状況を解読し、信号の色や一時停止の標識など、標識や信号にも反応できるようになっている。そして、リアルタイムで収集した情報と、2,000万マイル(約32,186,800キロメートル、地球約800周分、東京・大阪往復約29,000回分)を超える実地での運転、200億マイル(約3,218,680,000キロメートル、地球・月往復約84万回分)を超えるシミュレーションで蓄積したビッグデータを活用し、他の道路利用者の行動を予測を行う。AIを活用することで、車の動きが自転車や歩行者、その他の物体とどのように異なるかを理解し、他の道路利用者が取る可能性のある行動を瞬時に予測することができる。
これらの先進テクノロジーにより、他の車や歩行者などさまざまなオブジェクトを識別し、AIを使用して最適に計画された行動やルートに従い、目的地まで安全に到達することができる。とはいえ、サービスを開始した当初は、混雑した道路で止まったり、かなりの急発進や急な割り込みをするなど、安全性への懸念からいろいろ批判の声が上がったが、いまではだいぶ落ち着いてきているようである。
日本でも実サービスを開始すべく、テストが始まったので、そのうちテスト車を見かける機会があるだろう。