ウクライナ侵攻が及ぼす半導体市場への影響

2022年7月1日

以前、昨今の半導体不足による影響と対策について本ニュースレターでご紹介しましたが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が、思わぬ形で半導体市場に更なる影響を及ぼしています。

半導体の生産には、ネオンやクリプトンなどのレアガス(希ガス)や、パラジウムなどのレアメタル(希少金属)が欠かせません。そしてそれらの一部はロシアやウクライナに生産の多くを依存しています。
ロシアによるウクライナ侵攻により、ロシアやウクライナのサプライチェーンは事実上寸断されており、世界的な半導体不足に拍車をかける要因として注目を浴びているのです。

では、どの程度レアガスやレアメタルの生産がロシアやウクライナに依存しているのかというと、まずレアガスに関しては、ウクライナは半導体の製造工程で使うガスの主要生産国であり、特に半導体に回路を描くレーザーに用いられるネオンは世界の供給量のおよそ70%をウクライナに頼っています。レアガスは地上の大気中にPPM(100万分の1)レベルでしか存在せず、空気からレアガスのみを取り出すのは極めて難しく、取り出したとしても生産効率が悪い為、レアガスは酸素や窒素を製造するための空気分離プラントの副産物として製造されることが一般的です。しかし、現在マウリポリやオデッサのレアガス生産工場は停止されている状況です。

また、レアメタルについては、資源国ロシアの世界シェアが高く半導体の配線などに使われるパラジウム生産の世界シェアは40%強に達します。これに加え、ロシアはネオンなどのレアガス3種類においては世界供給の30%程を占めています。

6月2日にはロシアの貿易省が、半導体生産に必要なレアガスの輸出を2022年度末まで制限することを発表しました。
世界各国によるロシアへの経済制裁が長引けば、最悪の場合一部原材料の供給が途絶えるなどのケースも起こりうる状況です。

このような状況を鑑み、ハードウェアの導入や置換えを検討されている皆様におかれましては、代替案も鑑みお早めに計画を立てて頂くことを推奨致します。